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【第2版】ロックマンエグゼ番外編 ご先祖様はノートンファイター!?
投稿日時 2012-3-14 23:04:23
執筆者 gf-tlvkanri
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あらすじ ロックマンが退治したウイルスはいつもと何か違う感じがした。その件は熱斗の祖父、光 正の名前に繋がり、さらに発展して行く。
序 いつもと何か違う? 珍しく熱斗が宿題で机に向かっている。調べ物でネットにアクセス中だ。 調べ物が見つかったと、即座にその結果へアクセスする。 「熱斗くん、そのファイルは」とロックマンが止めようとするも、間に合わない。 「うわ、何だこりゃ!?」 「まりこ先生も言ってたよね?『ナビが安全か調べてからアクセスしなさい』って」 呆れつつも、ロックバスターを連発して熱斗のアクセスした先にいるウイルスを撃退。安全を確保するロックマン。しかし、このウイルスに違和感を覚えた。 「?何か違うような・・・」何か不安そうな表情を見せるロックマンに熱斗が尋ねる。 「ロックマン、どうした?」 「何でもないよ、熱斗くん。いくら時間がないからってちゃんとボクが調べてからアクセスするんだよ」 「わかったってば」 このウイルスの存在が、熱斗の祖父の名前につながるとは思いもしなかった熱斗であった。
起 祖父、光 正(ひかり ただし) 翌日の学校。メイル達に昨日あったことを話す熱斗。そこへカーネルから連絡が入る。「カーネル、久しぶりだね」カーネルにロックマンが挨拶する。 「ロックマン、すまないが光正博士の情報について知らないか?」 「うーん、急に言われても」 「何かあったの?」メイルのナビ、ロールがカーネルに質問する。 ロックマンとカーネルのやりとりは、ロールの他、ガッツマン、アイスマンにも知らされている。 「ああ、ここの所、通常のウイルスと違うヤツが増えていてな。で、そのウイルス(そいつら)の解析を行った(調べた)結果、光正博士が生きていた当時のウイルスを現代の技術でいじったものらしいことが判明した。この当時のウイルス情報については、光正博士とDrワイリーが分かるだろうというわけだ」 「なら、Drワイリーを捕まえればいいんじゃ?」 そこへカーネルのマスターである、バレル大佐が通信に加わった。 「そう思ってワイリーの行方を追っているんだが、まだどこにいるか掴めない」 「バレル大佐!」 「そんなわけで光正博士の方からと思って、ロックマンや熱斗に連絡したというわけだ」「俺も、じいちゃんのことは正直わからない。パパなら分かるだろうけど」 「光博士に聞いてみてもらえるか?最悪の場合、ロックマン達のような現代のナビでは太刀打ちできない事になる可能性がある」 「どういうこと?」メイルが熱斗のPETを覗き込んで炎山に問いかける。 「それは俺が説明しよう」炎山がさらに通信に加わる。
「今ネットセイバーとIPC協同で、このウイルスに関して調査・追跡している。このウイルスに感染した場合、ダークロイド等目ではない程の凶悪化がナビに発生するんだ。まだ数例だけだが、感染者が増えるたびに凶悪化している。まだ抑えられているが、このまままでは先が見えている」 「で、さっきのバレル大佐の話に繋がるわけだ」熱斗が納得した様子を見せる。 「非戦闘型ナビでも、グレイガやファルザーを倒したビースト能力のロックマンと同等の力を持ち合わせるように準備が進められているが、まだその準備に時間がかかる。それに感染の広がり具合によっては間に合わないことになる」 炎山とバレル大佐の話からことの大きさを感じ取る、熱斗とロックマン。 「わかった。学校が終わったら、パパに聞いてみるってことでいいか?炎山、バレル大佐」 2人は熱斗の申し出を了承し、通信が終わった。
その放課後。熱斗は父である祐一郎に事の次第を話し、祖父である光 正(ひかり ただし)のことを尋ねた。 「非戦闘型でも、それほどの力を持ち合わせるようにしなければいけないとは。随分な話だな。当時の情報の開示を科学省に掛け合ってみよう」 「頼むよ、パパ」 「熱斗君、僕たちも協力するよ」アイスマンをナビに持つ氷川透が協力を宣言する。 デカオやメイルも同意して頷く。 「それにしてもよ、そんな古いウイルスをいじってどうするんだ?」 「ガスな」ガッツマンもデカオの疑問に同意の相づちを打つ。 「多分だけど・・・たとえば、南極とか北極の氷が溶けたら、その中の微生物や細菌が現代に現れる。そうすると、現代に合わせて生き残るように変化する。本当なら、進化の途中でボクたちの体もそれに対抗できるようになるけど、それができない。そういうことを狙っているんじゃないかな」 「つまり、それをナビに対して行えば、世界を破滅させることだって出来るってことよね?でも、以前にそういうことあったんじゃなかったっけ?」 透の予想に、メイルが質問でツッコむ。化石となった古代ウイルスと戦ったことがあったためである。 「あの時は、ウイルスが変化や進化したわけではなかったからな。存在当時のままだった。だから、我々が対処できた。そういうことだ」バレル大佐がメイルの質問に回答する。 「熱斗くん、ボクたちも気をつけよう」 「そうだな」
承 光 正の遺した自立AI(もの) その頃、最新の感染が起こっていた。 IPCのナビ達が戦うが苦戦する。そこへ遠距離攻撃の加勢が行われた。 「サーチマン、弱点をサーチしろ」ライカの指示で、サーチマンが敵の弱点を探る。 「特に弱点は見つかりません」サーチ結果を伝えると、次の指示が飛ぶ。 「IPCのナビ達に直接加勢だ。いけるな?」 返事の代わりに前線に加わるサーチマン。 サーチマンのライフルがIPCのナビ達をサポートするも、次々にデリートされていくIPCのナビ達。 「このままではIPCのナビ達が全滅する」ライカがそう状況を把握した時・・・ 電脳空間に変化が起きた。一台の車と一台のバイクが現れた。バイクにはネットナビと同じ存在なのかどうかもわからない黄色い存在があった。 車がIPCのナビ達をガードしている間に、バイクに乗った謎の存在が敵を蹴散らす。 「何だ、あれは!?」状況を把握しようとするサーチマン。 「サーチマン、サーチとデータ分析して保存しておけ」 ライカの指示に従って、車とバイク、それに黄色い存在をサーチ・分析し保存するサーチマン。 サーチマンのサーチが終わった直後に車もバイクも、黄色い存在も電脳空間から消えた。 「どうやら、ネットナビではないようです。自立AIタイプの存在のようです」 「わかった。バレル大佐と炎山に報告を。後さっきのデータも渡しておけ」 「了解しました」サーチマンが先程保存したデータ共に報告書を送信する。
数十分後。炎山とバレルがライカに通信してきた。 「報告書と保存データにあった、黄色い存在。何か心当たりは?」 「特にない。いったい何者なんだ、あいつは・・・」 「1つ気になる点があります。あの黄色い存在をサーチした時、光博士の癖と似たものを感知しました。光博士に聞いてみるのはどうでしょうか?」 「ライカ、今回の件についてどう思う?」バレルがライカに意見を求める。 「あの黄色い存在が今回の件を解決する鍵になる可能性はあると考えています」 「確かに、その可能性はある。あのウイルス相手に、簡単に蹴散らしていたからな」 「炎山様、あの黄色い存在ですが・・・グレイガやファルザーのような異世界(ビヨンダート)の一部らしき痕跡が確認できました、どうなさいますか?」炎山のナビであるブルースがデータの解析結果を報告する。 「なるほど、異世界(あちら)の光正博士が関わった可能性があるということか・・・バレル大佐、ライカ。日本で動いた方が今回の件を解決しやすいと思う。どうだろうか?」炎山からの提案を受け入れ、バレルとライカは日本にやってくることになった。
祐一郎が熱斗からの話を受けて、科学省に光正在籍時の情報開示を求めて1週間後。 ようやく、許可がおり当時の情報を入手できた。 許可が下りるまでの間に最新の感染事例の一件に関しても情報を入手済みだ。 「流石だな、父さん。ネットナビが存在するよりも前にアレを作っていたなんて。アレなら確かに、今回の件を解決できるかも知れない」
バレルとライカが来日し、熱斗と炎山に加わる。 「また、一緒に動くことになるなんてな。よろしく、バレル大佐、ライカ」 「ああ」「こちらこそよろしく頼む」バレルとライカがそれぞれ手短に熱斗へ返事をする。
「熱斗、この間のおじいちゃんの件、情報が分かった。科学省へ来られるか?」 「大丈夫だよ。パパ、俺の他に、炎山とバレル大佐、ライカも科学省へ行っていい?」 「そうしてくれ、熱斗以外の3人が見たという黄色い存在についてもわかったしな」 熱斗以外の3人は顔を合わせて頷く。数十分後。4人は科学省で、光祐一郎と顔を合わせていた。 「早速だが、炎山君、バレル大佐、ライカ君。君たちの見た、黄色い存在。それは、ノートンファイターだ」
「ノートンファイター?何それ?」 「おじいちゃんが若かりし頃、今とネット世界は違っていた。そしてネット世界を安心して歩く為の方法もな。自分の知識・経験・感と共に、ウイルス対策のソフトが必要だったんだ。当時ウイルス対策のソフトはいくつもあったんだが、ある製品の広告キャラクターとして生み出されたのがノートンファイターなんだ」 「広告キャラクターとして生み出されたのなら、あのような戦闘力を持ち合わせているのはおかしいのでは?」炎山が祐一郎に質問する。 「ノートンファイターの設定が当時の資料に残っていた。つまり、その設定を元におじいちゃんがノートンファイターを存在させたんだ。もちろん武器やバイク・車の設定もあった。だが、ノートンファイターが活躍するような時代(とき)を迎えないように、という願いを込めて科学省内の特別プログラム保管システムに移された」 「日本の科学省の特別プログラム保管システムと言えば、世界でも有数の保管能力を誇るもの、それなのに何故ノートンファイターが?」今度はライカが質問する。
「答えはビヨンダートの一件。つまり、あの事件で、特別プログラム保管システムの一部が故障した。そしてネット空間にノートンファイターが出た。そして、プログラムに従った結果ビヨンダートに辿り着いた」 「なるほど、ビヨンダートの光正博士がノートンファイターの設定データを元に効力が発揮されるように手を加えた・・・と」バレル大佐が祐一郎の言わんとしていたことを先んじて発する。 「その通り」 「おじいちゃんと、ビヨンダートの光博士か・・・そういえば、トリルは元気かな」 「ある意味トリルとノートンファイターは兄弟と言えるかも知れないな、ビヨンダート(向こう)の光博士が関わったのだし」 「で、今ノートンファイターはどこに?」炎山が祐一郎に問う。 「分からない。今回の件、科学省でも協力することになったから、科学省でも行方を追っている」
「光博士、我々から先手を打つことは出来るか?」 バレル大佐の質問に、ライカも同意している。 「あの新型ウイルスの発生源がどこなのか、誰が作ったのか。そういうことが分かれば、手の打ちようはある」 4人は黙って祐一郎の言葉を聞いている。 「ライカ君、君とサーチマンでその辺りの情報を探れないか?感染したナビから分かる範囲で」 「了解しました、光博士」 「それと、今までの事件のデータからすると、今まではプログラムアドバンスが存在しなかったチップを、対応させる必要がありそうだ。現在、名人とそのチップのプログラムアドバンスが行えるようにしている最中だ」 「今までプログラムアドバンスが存在しなかったチップ?」 「シンクロチップさ」 「シンクロチップをプログラムアドバンス〜!?」 祐一郎の発言に、熱斗は驚いた。 「そうだ」
「そもそもシンクロチップって俺たちが使っている物以外ないんじゃ?」 「今熱斗が使っているものが壊れる前に予備を準備しておくのは当然のことだ。予備は準備できているのが1枚だけだったが、少し前にさらにもう1枚準備のメドがついた」 熱斗は、それに納得して気になったことを祐一郎に聞く。 「俺とロックマンで1枚。じゃ、後2枚のシンクロチップはどんな組み合わせなんだ?」「ロックマンとノートンファイター、熱斗とノートンファイター。つまり3つでのクロスフュージョンだ。『トライアングルフュージョン』と私は呼んでいる」 「トライアングルフュージョン!?ノートンファイターが絡んで、クロスフュージョンできるの?パパ」 「多分できると考えている。ビヨンダート(あちら)の光正博士が手を加えたとは言え、元々は熱斗のおじいちゃんが作ったものだからな。パパの作り出すものには、おじいちゃんと同じ様な癖というか傾向がある。それは、ナビと自立AIの違いがあっても同じだと思う」
「熱斗、ロックマン、ノートンファイター。光家3代のトライアングルフュージョンならいけるだろうと?」 「その通り。IPCの副社長だけあるね」 「確かにノートンファイターの力を取り込む・活用できるなら、それにこしたことはない。しかし懸念点があります。1つはトライアングルフュージョンの為のチップがいつ完成するか?もう1つは、熱斗がトライアングルフュージョンに耐えられるか?ということです」さらに炎山が祐一郎に質問する。
「そこで、頼みがある。ノートンファイターを見つけたら、何とかこちらに送って欲しい。ノートンファイターは自立AI型だから、クロスフュージョンできるように改造する必要がある。それと、クロスフュージョンより熱斗の体力が消耗することはおそら避けられない。つまり、今回の件でトライアングルフュージョンできるのは1回だけと考えてくれ。当然使いどころもな」 「パパ、シンクロチップは預けたほうがいい?」 「今はいい。ノートンファイターの改造が終わってからだな」 「じゃ、チップが必要な時は言って」 「できるだけ早く、そうしたいとは思っている」 「大丈夫、何とかなるって」 熱斗の楽観視した言葉の後、4人は科学省を出た。
ライカは感染したナビからの情報収集、ウイルスの発生源や作成者特定。3つの目的の為別行動となり、単独行動に入った。 バレルはというと、炎山の手配でIPCが用意した部屋に滞在し行動することになった。「じゃ、俺は家に帰る」熱斗は帰宅する意思を告げ、先に歩き出した。 「わかった。何かあれば、互いに連絡しよう」 そうして、残った3人も分かれた。
熱斗達が科学省を出た後、数日前に届いた3枚目のシンクロチップを開封する祐一郎。「新たな予備として準備したはずがこういうことになるとは」 手元の2枚のシンクロチップを目の前に、トライアングルフュージョンの完成を再度決意するのだった。
トライアングルフュージョンの完成を目指し、シンクロチップの改造を進める光祐一郎。助手として名人がいる。 「名人、そっちはどうだ?」 「順調です、光博士」 「しかし、またとんでもないプログラムアドバンスを思いつきましたね」 「ノートンファイターの存在を知った時、多分トライアングルフュージョンがいけるという確信のような閃きがあったんだ。熱斗はクロスフュージョンを体得しているくらいだから、大丈夫だろうとも思った。で、こうして名人に手伝ってもらっているわけだ。チップの改造をした後は、ノートンファイターの改造が終わればほぼ完了だ。そこから先は熱斗次第ということになる」 「しかし、何故あんなウイルスが出てきたんでしょうか?」 「ビヨンダートの件で、こちらとあちらが繋がった際に、活動停止していた古代のウイルスがビヨンダート(向こう)で目覚めて、ビースト能力とまではいかないがそれなりの力を手に入れたという可能性があると考えている」 「つまりは、自然発生ということですか?IPCの解析では人工的に手を加えられた可能性があるということでしたよね?」 「もともとはこちらのウイルスだったが、ビヨンダートに流れて向こうで進化・能力獲得した。その結果、こちらへ出現できる力を持つようになり、こちらで感染させているということじゃないだろうか。ビヨンダート(あちら)でのウイルスの自然な進化と、こちらで人工的に手を加えて誕生させたウイルスとが非常に似通ってしまったのだと思う」 「やれやれ、ビヨンダートの一件がこんな事件(こと)を引き起こすとは」 「まったくだ。でも、今回の件で2つ良いことがある。1つはトライアングルフュージョンを実現できるということ。もう1つは、親父のつくった形見とも言えるノートンファイターだ」 「なるほど、言われてみれば確かに」 「名人、改造の手助けを頼む」 名人は頷いて、祐一郎と共に作業を進めた。
転 新しいプログラムアドバンス 熱斗が科学省を訪れた翌々日。熱斗達の授業中に、通信が入った。 ひとまずロックマンが熱斗に気づかれないよう応対する。 「ブルース、何かあったの?」 「ノートンファイターの手がかりが掴めた。来てくれないか?」 「分かった。今熱斗君達は授業中だから、大丈夫だと思う。でも、授業が終わる前に戻らなきゃいけないけど」 「ロックマン、1人で行くつもり?」 「1人で行くなんてずるいでガス」 「僕たちも行く」 「じゃ、みんなで行こう。この授業時間が終了する前に戻ってこよう」 ロックマン、ロール、ガッツマン、アイスマンはブルースと共にノートンファイターの元へ向かった。
「このあたりにノートンファイターがいるのか」ロックマンが呟く。 ロール達も辺りを見回して探す。そこへあるナビが姿を見せる。 「サーチマン!」 「どうやら、このワクチン作成工場跡がノートンファイターの根城らしい。だが、・・・」 「あ、あれ!」ロールが声を上げた。そこには、車とバイクがある。 「車とバイクに気づいて、調べてみたんだが、ノートンファイターはいなかった」 「工場の制御室とかはどうかな?」 「ああ。そこを調べようと思っていたところへ、ロックマン達が現れたというわけだ」 「制御室へ向かおう」ブルースが先頭で皆、制御室へ向かった。 「いたでガス!」
いくつかあるワクチンカプセルが作動していた為、どれかにいるのは分かっていた。皆で手分けして探した結果、ガッツマンが見つけた次第である。 「なるほど、そういうことか」サーチマンが納得した表情を見せる。 「何か分かったの?」アイスマンがサーチマンに質問する。 「このワクチン、ウイルスの根本が同じなら、いかに進化や能力を獲得しても、防げるシロモノだ」 ロックマンがノートンファイターのカプセルを開けようとする。 「待て、まだ調整中だろう。カプセルのタイマーを見ろ」 タイマーの残時間が残り数分を示している。 残りが3分を切ったところで、工場が攻撃を受ける。 「まさか、敵?」ロールは不安そうだ。 「戦うぞ!気を引き締めて行け!」ブルースの一声が、戦闘モードへ皆の意識を切り替えさせる。 サーチマンとロックマン以外はこのウイルスと初の戦いである。 「属性の弱点はない。各自が得意な戦い方でいい」サーチマンからの情報により、得意とする戦法で戦うロックマン達。 戦いの最中、ノートンファイターの調整が完了、カプセルから出てきた。 すぐにウイルス反応を確認して向かうのであった。
手強い、それがロックマン達に共通する認識だった。いくつも発生した感染事件を通じ、ロックマンが初めて戦った時よりずっと強くなっているのは感じ取れた。次第にジリ貧に追い込まれていく。 「そういえば、もうノートンファイターが目覚めているはずだ。姿を見せてもおかしくない」 「何とか、ノートンファイターの力を借りられないかな?」ロックマンが誰かに向けてというわけではないが、提案のように言う。 「アイスマン、氷で足止めできる?」ロールの提案がアイスマンに向けられる。 「やってみる!」 アイスマンが氷の息で、ウイルスを凍らせようとする。止まったのは一瞬だけで効果はないと言って良い。 その状況下、ロールがノートンファイターの存在を感知する。 「ロックマン、ノートンファイターが来たわ!」 ロールの言葉に併せてロックマンが振り向いた。そしてノートンファイターと目を合わせた瞬間・・・それは突然発動した。 「ええ!?何でロックマンとノートンファイターがソウルユニゾン出来るの!?」 ロールの疑問は当然だ。ブルースもサーチマンもガッツマンもアイスマンも驚いている。ノートンファイターの黄色が体に現れたロックマン。完全にソウルユニゾン出来ている証拠である。 ノートンソウルのロックマン、ノートンファイターが2人で一斉に攻撃し、あっさりとウイルスを撃退した。 「サーチマンから話は聞いていたが、これほどとは」ブルースが呟いた。 戦闘が終わってもノートンソウルが解けないロックマンはこの状態に意味があると考えていた。
「ブルース、サーチマン、今ならノートンファイターを科学省に連れて行けるんじゃないかな?」 熱斗達の授業終了まで後5分。大急ぎで、科学省へ向かったロックマン達。あの工場にあった車とバイクと共にである。ノートンファイターを祐一郎に預けた所で、ロックマンのソウルユニゾンが解けた。 「ありがとう、ロックマン。その表情からすると・・・何でソウルユニゾンが解けなかったのか?」 「はい」ロックマンはそれだけ返事をした。 そこへバレルがやって来た。 「ロックマン、カーネルを向かわせられず済まなかった。光博士にカーネルのことについて確認をしていてな」 「バレル大佐、すみません。今は熱斗君の授業中で、すぐに戻らないといけないんです」「わかった。では後にしよう」 「ありがとうございます!」 学校に戻ったロックマン達は、それぞれ何があったのか話したのであった。
昼休みにノートンファイターを科学省に連れて行ったナビのオペレーター達が集まっていた。 「しっかし、驚いたぜ。まさかロックマンとノートンファイターがソウルユニゾンするなんてな」 「これで、光博士の言っていたトライアングルフュージョンが出来る可能性が更に高まったな」 「トライアングルフュージョン?何それ?」 熱斗がトライアングルフュージョンについて説明する。 「というわけなんだ。まだチップの完成には時間が掛かるみたいだけど、名人さんも手伝ってるし、そのうち完成するんじゃないか」 「トライアングルフュージョンか・・・熱斗君の体力だけじゃなくて、もう1つ気がかりな点があるね」 「何が気になるの?」透の気になる点があるという発言に、メイルが問いかける。 「時間だよ。トライアングルフュージョンの成功率や熱斗君の体力が問題ないとしても、トライアングルフュージョンの完成時間があまりにも掛かると意味がない」 「そっか、それは考えてなかった。パパはその辺りを考えてるだろうから、心配はないと思う」 「多分だけど・・・トライアングルフュージョンをする時は、クロスフュージョンより無防備になるだろうから、僕達が熱斗君やロックマンを守らないとね」 透の懸念は杞憂ではなかったことが後に証明される。
科学省の光祐一郎。ノートンファイターの改造をする為の事前解析を行っていた。 「なるほど。本来この部分が、機能しないように作っていたんだな。それをビヨンダートの光博士が機能するようにした、と」 「ノートンファイターの解析はどうですか?」 名人が状況を確認する。 「大部分のところは見ることができた。後2時間あれば、解析終了できるだろう」 「わかりました。チップの方は順調です。当面はノートンファイターの解析待ちです」 「じゃ、食事に行ってもらって構わない。僕はさっきサンドイッチを食べたから大丈夫だ」 「それでは、行ってきます」
名人が食事に出かけて30分後。 「ふぅ・・・親父が若かった頃に、これだけのものを既に作っていたのか・・・この手のことは僕が世界初だと思っていたが、先を越されていたとは」 ノートンファイターの大部分の解析が終了し、その結果分かったことがある。 それは、祐一郎がPETやナビを生み出した際の理論の根幹と同様な理論の元で、自立AIとしてのノートンファイターが生まれていたことである。 「ノートンファイターは、いわば、PETやナビのご先祖様ってことか」 と同時に、納得できたことがある。 「親父の作ったノートンファイター、僕の作ったロックマン。これだけ似ていれば、ソウルユニゾンできるのも不思議じゃない。違いは、あくまでプログラムに従う自立AIか、自らの意思で行動が出来るナビかの違いだけだ」 ワイリーと同様に科学省で名を連ね、著名であった光 正(ひかり ただし)の偉大さを改めて知った祐一郎であった。
そんなことを思っていると、そろそろ名人が帰ってくる時間となった。 「ただいま戻りました」 「お帰り、名人。今ノートンファイターの解析が終わったところだ。そちらに解析データを送る。ノートンファイターの改造を手伝って欲しい」 「もちろんです」 2人は早速、ノートンファイターの改造を開始した。 「しかし、あのデータを見て驚きました」 「だろうね。僕も驚いたというか、親父のすごさを知ったよ」 「PETやナビが生まれる以前に、既に同様のものが存在していたなんて・・・しかも数十年も前に」 「もともと広告のキャラクターとその設定をネット空間に存在させたものの、あの能力を解放するような事態にはなって欲しくなかったんだろうな、親父は。だから対ウイルス用の能力をブラックボックス化した上で封印した。だが、ビーストの一件で、ビヨンダートへ出た際、封印が解けてしまった。そこへビヨンダートの光博士がブラックボックスを解除して能力を発動できるようにした。で、本来はビヨンダートの中で活動するはずのノートンファイターが、何故かあちらからこちらへ移動する能力を身につけてしまったというのが僕の想像だ」 「なるほど、そういうことだったんですか・・・」 「まぁ、僕の想像でしかないけどね。まずはノートンファイターを改造して、トライアングルフュージョンを完成させないと」 「わかってます、光博士。急いで終わらせましょう」 祐一郎は熱斗に連絡を取り、シンクロチップを受け取った。これでトライアングルフュージョンに必要な3枚のシンクロチップが揃い、さらに作業を進めるのであった。
2人の作業は想定よりも時間がかかった。その原因はトライアングルフュージョンの為の調整が難航した以外、もう1つある。 「チップもプログラムも何とかなりましたね、光博士」 「が、もう少し早く完成させたかった。あのウイルスの凶悪化はかなりの速度で進んでいる。それに実体化の能力を持ったものが過半数を占めている。もうネット警察やIPCのナビでは蹴散らされるだけになってしまった。それだけじゃない、今や実世界の警察や一般のナビにすら被害が予想以上に出ている」 「とは言え、今回はノートンファイターの車とバイクにも仕掛けを施しましたし、熱斗君達の助けに充分なるでしょう。何より、ノートンファイターを自立AIからネットナビとして転換できた点は非常に大きいですよ」 「ノートンファイターのネットナビ化はともかくとして・・・ネットナビが普及している世界で、あの手の仕掛けをすることになるとは思わなかったけどね」 「まったくです」 2人の作業はこれで終わった。後は熱斗が実戦の時に、ノートンファイターを送るだけである。
科学省から熱斗の元にシンクロチップ3枚が届けられた。これでウイルスに対抗する手段を得た熱斗。それに喜んでいる時間はほんのわずかしかなかった。 学校からほど近い広場に実体化ウイルスが出現した。元は非常に大きいビルが2つ並んでいたのだが、老朽化の為取り壊され、市民の憩いの場として広場になった経緯がある。並の広さの野球場を5、6個合わせても足らないくらいの大きさを誇っている。 今回現れている実体化ウイルスはそれほど大きくはない。しかし、広場をほぼ埋め尽くすほどの数だ。数百どころではないのは見て取れる。
学校が終わって下校中の熱斗達に連絡が入り、広場へ向かう。そこへライカ・バレル大佐も駆けつけてきた。 広場に向けて、クロスフュージョン用のフィールド形成エネルギーが放出され、ネットナビが実体化可能になる。それだけではない、広場から実体化ウイルスが出ないようにするバリアとしても機能するのである。 「いくぞ、ロックマン」 「うん、熱斗君」 「シンクロチップ、スロットイン!クロスフュージョン!!」 メイル、デカオ、透、ライカ、バレルは1カ所に固まりながら、ナビをオペレートして戦っている。 熱斗とロックマンがやや離れた位置で、ウェポンチップのプログラムアドバンスを駆使して戦っているものの、数の多さが問題になっている。 状況を科学省から見ている祐一郎と名人。名人がノートンファイターを転送準備する。「熱斗、今から名人がノートンファイターを転送をお前のPETに転送する。ノートンファイター共に戦うんだ」 「分かった、パパ」 すぐにノートンファイターが転送され、熱斗はノートンファイターを実体化させる。 「ソウルユニゾン!ノートンソウル!」 熱斗はすぐにトライアングルフュージョンを実行しなかった。1つは透が言っていた「時間」の点。もう1つは「シンクロ率」を気にした為である。ソウルユニゾンには2つ利点がある。1つ目は、ソウルユニゾン相手の能力をロックマンが使えるようになるだけでなく、ソウルユニゾン相手もそのまま行動できる。いわば同じ能力の持ち主が2人というか2体というか、そういうことなのだ。2つ目は、シンクロチップ程シンクロ率を要求されることはないにしても、シンクロ率がそれなりに必要であること。と同時に、熱斗とノートンファイターのシンクロ率に関しても簡易チェックともいうべき結果が出るからだ。 ソウルユニゾンで敵の数を減らし、トライアングルフュージョンが必要になった時の時間や状況を確保できるようにするのが熱斗の狙いである。 ノートンソウルのロックマンとノートンファイターが動いた為、さきほどに比べれば数は減ったもののまだまだ数が多い。一方、カーネルやサーチマン達は苦戦より防戦に近い状況を呈していた。
「メイルちゃん、デカオ君、透君」 「何ですか?」 「今からノートンファイターの車とバイクをそちらへ送る。使って欲しい」 「わかりました、ありがとうございます」メイルが祐一郎に返事をする。 「ライカ君、バレル大佐。聞いての通りだ。援護してもらえるか?」 「了解しました、光博士」 「こちらも了解した」 ライカとバレルがサーチマンとカーネルに指示を出して攻撃し、敵を少し下がらせる。こうして敵との間に何もない空間を作りだす。 「名人、転送を!」 名人が指示に従って車とバイクを転送し、先程出来た空間に出現させる。 「デカオ君はガッツマン向けに車を。メイルちゃんと透くんはロールとアイスマン向けにバイクを使うんだ」
「でも、どうやって車を使えばいいんだ?俺、車の運転なんて出来ないぞ?」 「車に乗るんじゃない、ガッツマンと車を合体させればいい」 「ガッツマンと車を合体ぃ〜?そんなこと、出来るのか?」 「大丈夫。出来る。この合体は一般のウェポンチップと同じ扱いだ。だからナビを問わずに出来るんだ。『スペシャルウェポン、ビークルアーマー』と叫べば、合体できる」 「わかったぜ。ガッツマン、行けえぇ。スペシャルウェポン、ビークルアーマー!」 車が各種パーツに分かれ、ガッツマンを覆う。合体後の姿はガッツマンの大きさと重量を活かした防御力を十二分に感じさせるものである。 「メイルちゃん、透君。バイクの方は、ノートンファイターの持つ対ウイルス用ワクチンから作ったバリアを周囲に発生させるようになっている。だから、ロールとアイスマンにうまく指示を出して、ウイルスを周囲のバリアに触れさせれば敵を倒せる」 「ありがとうございます!」メイルと透がハモって祐一郎に返事をした。 「ロール!」 「アイスマン!」 ロールが運転し、アイスマンが後ろに乗る。アイスマンが氷で敵をバイクの周囲に来るよう誘導し、蹴散らすということである。
「サーチマン、カーネル。代わるでガス」 「行くわよ、アイスマン」 前衛にいたカーネルと入れ替わるガッツマン。 そしてサーチマンは後衛に下がって、バイクに乗ったロールとアイスマンを援護する。 援護が一息ついた時、ライカがサーチマンに状況を確認する。 「サーチマン、ロックマンとノートンファイターの様子を把握できるか?」 「数は多い、ん?何か変です!」 「どうした?サーチマン!」 「ウイルスが数体単位が合体しているものがあります。そいつらと合体していないウイルスとの攻撃がロックマン達をてこずらせています」 「わかった。そこはガッツマン達に任せて、お前はロックマン達を援護しろ」 「了解しました」 「バレル大佐、どう思いますか?」 「・・・もしかすると・・・」 何かを言おうとしたが、やめたというバレルの様子にライカは何を言おうとしたのか何となく察しがついた。 ガッツマンとロール達はようやく、ウイルス達を大きく下がらせることに成功した。 「もう大丈夫だな、カーネル。ロックマン達を援護しろ」 カーネルがロックマン達の元に到着した時・・・ 数十体単位で合体したウイルスがいくつも存在していた。しかも、合体ウイルスは自分自身をゆっくりではあるが、増殖させている。 「これではいつまで経っても・・・」カーネルが半ば苛立ちながら吐き捨てる。 しばらく膠着状態が続いた。増殖のため、ウイルスが次々に現れるので、そうならざるを得なかった。 しかし、この状況を打破できるチャンスがやって来る。遅れてガッツマンとロール、アイスマンが来たのだ。 「ガッツマン、その姿は!?それにロールとアイスマンもバイクに!?」 「ノートンファイターの車をスペシャルウェポンで装備したでガス」 「こっちのバイクも使えるようにしてくれたの」 「ロックマン、こいつらは全員まとめて倒さないとダメだ。一体でも残れば、増殖する。そうなれば」 「となると・・・みんなが今使える武器では無理があるな。どうすれば・・・」 「ガッツマン。それにロールとアイスマン。車とバイクをロックマンに!」 ロールとアイスマンはバイクから降り、ガッツマンはスペシャルウェポンを解除した。 「熱斗、ノートンファイターの車とバイクを使え!ロックマン専用ウェポンがある!」 「ロックマン専用ウェポン?」 一体何だろう?と明らかに不思議がる熱斗だが、祐一郎の指示が続く。 「バイクに乗って、車へ突っ込め!」 「ロックマン、パパの言うとおりにするぞ!運転は任せた!」 「熱斗君、行くよ!」 バイクに乗って、車へ突っ込む熱斗とロックマン。バイクの接近に合わせて、車の屋根部分が上に開きバイクを収容するハッチと化す。 「車の開いている部分からバイクごと車に入れ!」 大きくバイクがジャンプし、車に入った。着地の衝撃を吸収する機構が作動した後、乗り手も含めてバイクが完全に固定される。 「熱斗、『スペシャルウェポン、ノートンアーマー』と叫べ!」 「スペシャルウェポン、ノートンアーマー!」 ガッツマンの時とは違い、明らかにプロセスが違う。こちらは合体というより変型である。 「これが、ノートンアーマー・・・」 「すごいや、熱斗君。これなら敵をまとめて倒せるよ。360(スリーシックスティー)バーストっていう必殺技もある。360度全方向に、ワクチンニードルを打ち出せるんだって」 「360度全方向か。だったら空中でやったら、効率よく行けそうだな」 「そうだね、みんなに協力してもらおう」
「みんな、頼みがある。ノートンアーマーの必殺技があるんだけど、空中でやった方が効率よくまとめて倒せるんだ。だから敵を空中に集めて欲しいんだ」 熱斗とロックマンの頼みを受けて、ノートンファイター、他のオペレーターやナビが空中にウイルスを集める。 集められたウイルスの中心に突っ込むノートンアーマー。 「ロックマン!」 「熱斗君!」 「360(スリーシックスティー)バースト!」 バイクの発生させるバリアでパワーアップされたワクチンがニードル状に360度全方向へ射出される。 次々にウイルスが消えていく。だが、運の悪いことに一体だけ残ってしまう。様子を地上から見ていたサーチマンが即座に対応したが、増殖の方が早い。 「増殖を阻止できなかった!申し訳ありません」サーチマンがライカへ謝る。 「それより、このチャンスをものに出来なかったのがマズい」サーチマンへ、というより周りに知らせるかのように呟く。 ノートンアーマーが再度攻撃しようとするも、ウイルスはこの場から撤退した。 「くそ、逃げられた」悔しがる熱斗。 「今回の戦いからすると、次が最終決戦だろうな。何となくそんな気がする」 「その通りだろう。次で今回の件に関して決着を付けよう」 「バレル大佐・・・」 トライアングルフュージョン用のチップを携えての初戦は、ウイルスに逃げられるといういう結果に終わったのであった。
結 トライアングルフュージョン あれから少し時間が経った。嵐の前の静けさの如く、あのウイルスに関する話が減っていた。 科学省で、何か分かったことはないか熱斗達7人が集まっている。 「多分、増殖したり力を蓄えている。そんなところだろう」 炎山の言葉は危機感が滲んでいた。 「みんな、今度は一気にトライアングルフュージョンで行く。だから力を貸して欲しい」熱斗の言葉に皆同意する。 「バレル大佐、1つお聞きしてもよろしいですか?」ライカがバレルに質問する。 「何だ?」 「はい、以前ノートンファイターを科学省に連れてきた時、大佐は『光博士にカーネルのことを確認していた為、カーネルを向かわせられなかった』と仰っていました。一体何を確認されていたのでしょうか?」 「カーネルが現存する最古のネットナビと言えるのは皆も知っての通りだ。ならば、ロックマンとソウルユニゾンが出来てもおかしくないのではと思ってな。それを確認していた。結論としてはできないのが当たり前ということだった。人間には、心臓や脳、筋肉など人間に皆共通する部分はある。しかし、人間としては一人一人違うだろう?そういうことだ」 「バレル大佐から、ロックマンのような力をカーネルが持つことはあり得るのか?という質問を受けてね。僕自身カーネルに興味もあったんで、調べさせてもらったんだ」 「光博士!」ライカは驚いたものの部屋に入ってきた祐一郎に敬礼し、元に戻った。
「さて、バレル大佐、ライカ、炎山君。3人の追っていたウイルスの情報をさらに分析してみた。あのウイルス自体は相当昔に存在していたが、今はほぼ絶滅したものだ。そして、突然変異のような形、というか異世界(ビヨンダート)における進化でああなったようだ。最初に調べた時は、正しく本質をつかめていなかった。すまない。で、ワイリーが作り出したのでは?という点に関しては、『今のあのウイルスに関しては』そうではないと言える」 「今のあのウイルスに関して?どうしてそうなるの?」 「つまり大元のウイルスを作ったのがワイリーかもしれない。そういうことですよね?」熱斗の疑問に炎山が答える。 「その通り。でもそれは、今我々に必要なことじゃない。今我々がやらなくてはいけないこと。それは、あのウイルスを倒してこの事件を解決する事。そういうことだ」 祐一郎の言葉に誰もが頷いた。
そこへネット警察の長官から連絡が来た。ビヨンダートの時と同じ様な時空間の裂け目が出来、あのウイルスが現れ続けているというのだ。 「ビヨンダートとの境目の時空間、もしくはビヨンダートで復活していたということか」「でしょうね、こういう状況を考えると」バレルの呟きに炎山が反応する。 「みんな、行くぞ!」熱斗を先頭に出かけていくのであった。
すぐにクロスフュージョン用のエネルギーフィールド形成の準備を行い、いつでも発射可能に体勢を整える科学省。祐一郎が熱斗へ連絡する。 「熱斗、裂け目を見つけたらすぐにトライアングルフュージョンしろ。フィールド形成すると同時に、ノートンファイターを転送する。この間ソウルユニゾンしたからな。シンクロ率は問題ないはずだ。頼むぞ!」 「分かったよ、パパ!」 数分後、裂け目を視認できる場所までやって来たが、まだ裂け目を目の前にしたわけではない。熱斗達の前にいくつものウイルスが立ちはだかる。炎山達が中央突破で道を作り、強引に進んでいく。熱斗とロックマンに無駄な体力を使わせない作戦を無言で実行している。ようやく裂け目の目の前まで来る事が出来た。 それにあわせて、クロスフュージョン用のフィールド形成・ノートンファイターの転送が行われる。3つのシンクロチップを取り出し、気合いを入れる熱斗。
「シンクロチップ、トリプルスロットイン!プログラムアドバンス!」 「トライアングルフュージョン!!」 トライアングルフュージョンを行い始めた熱斗とロックマン。相変わらず、ウイルスが現れている。 熱斗以外のオペレーター達も各自のナビを実体化させる。 「アイスマン、氷のドームを作って熱斗君達を守るんだ!」透の指示が飛ぶ。 「こっちも行くぞ、ガッツマン。スペシャルウェポン、ビークルアーマー!」 氷のドームを作ったアイスマンが、ロールが運転するバイクに乗る。 エンジンをふかし、ウイリーで突っ走るロール。ブルースとカーネルが倒したウイルスの残骸を利用して空中へ飛ぶ。そこからアイスマンが氷の息を吹きかけ広範囲のウイルスを瞬間的に足止めする。その一瞬を利用してウイルス達を消滅させる。
氷のドームを守るガッツマン。ビークルアーマーの力は大きいが、その重量故にスピードが鈍いのは致し方ない、と思うデカオ。 「デカオ君、ビークルアーマーの走行機能を使うんだ。車の時と同じ最大速度が出せる」「よっしゃ、ガッツマン。タイヤを回転させろ!」 「承知でガス!」 ガッツマンの右足甲の外側、左足甲の外側についているタイヤが回転し始めると、ガッツマンのスピードが上がる。 「ふぇ〜、ガッツマンがあんなに早く・・・」 スピードが上がったのはいいことではあるが、倒し損ねるウイルスが出てしまう始末。 そこをフォローするのは、サーチマンである。 「ガッツマン、フォローする。思い切り行け」 「感謝でガス!」
ブルースとカーネルのタッグは裂け目を目指していた。ウイルスを倒すだけではこの事件が終わらないのは明白。それにロックマン達のトライアングルフュージョンが完成する前に全て終えることが出来るなら、それが一番良い。 ブルースとカーネルが裂け目に近づくと、数体合体したウイルスや数十体合体したウイルスが現れるようになった。 「裂け目には近づかせないってことか。なら!」 「打ち破るのみ!」 気合いを入れて、ウイルス達と戦うブルースとカーネル。合体ウイルスでも数体程度の合体ものなら互角なのだが、数十体の合体ものとなると、分が悪い。 「ブルース!カーネル!」バイクに乗ったロールとアイスマンが駆けつける。 ブルースとカーネルがそれぞれ、合体ウイルスに傷を付ける。その後はバイクの出番である。傷口にワクチンを触れさせてウイルス消滅させるのである。 2体のナビと1機のバイクにより、合体ウイルスの相手ももう終わるだろうと思われる頃。
「熱斗君!」ロックマンが心配して声を掛ける。 トライアングルフュージョンで、一番苦しんでいるのは熱斗であった。当然ロックマンとのクロスフュージョンは問題ない。また、ロックマンとノートンファイターのクロスフュージョンもさほど問題ではなかった。つまり、熱斗とノートンファイターのクロスフュージョンが問題なのである。 「くっそ。ロックマンだけじゃなくて、ノートンファイターとのクロスフュージョンがこんなにキツいなんて!」 「熱斗。私はお前の祖父、光正博士によって生み出された。いわば、お前の祖父の形見ともいえる。そしてロックマンはお前の父、光祐一郎博士が生み出した。私とロックマンとお前。光家3代の力を、魂をクロスさせるのだ」 熱斗でもなく、ロックマンでもない。この声の主はノートンファイターしかあり得ない。 「おじいちゃんと、パパと、俺の力と魂をクロスさせる・・・」 そう呟いた熱斗は余計な気負いが消え、リラックス状態で自然体となる。 ようやく熱斗とノートンファイターのクロスフュージョンが完成した。 すなわちそれは、トライアングルフュージョンの成功を意味する。
氷のドームの外ではガッツマンとサーチマンが守っている。 ブルースとカーネル達が相手にしていた合体ウイルスが今度は氷のドームへ向かっていく。 「マズい!」ブルースが焦る。 「させるか!」カーネルが阻止しようとするも、かわされてしまう。 ロールとアイスマンのバイクも全速力で、氷のドームへ向かう。 「ガッツマン、サーチマン!そっちに合体ウイルスが行ったわ!気をつけて!」 ロールの声を受けて注意を払うガッツマンとサーチマン。 合体ウイルスが数体現れた。数十体の合体ものが3体、残りは数体程度の合体ウイルスだ。 ガッツマンが3体のうちの1体をどうにか倒す。大きい合体ウイルスは後2体。そして、残りの合体ウイルスの2体をサーチマンのライフルが仕留める。 そこへブルースとカーネル、バイクに乗ったロールとアイスマンが駆けつけてきた。 「デカブツが後2体。ビークルアーマーのガッツマンでさえ、あのボロボロ具合か」 ブルースの呟きに、カーネルが檄を飛ばす。 「まずは、あいつらを叩く。余計なことを考えるな!ガッツマンは無事なのだから」 サーチマンとロールとアイスマンは小さい合体ウイルスを相手にしている。 しばらくすると。大きい合体ウイルスはが後1体、小さい合体ウイルスが後2体となったが、ブルースやロール達は相当疲労していた。
残りは計3体。もっと強くなろうということなのか、大きい合体ウイルスに小さい合体ウイルスがさらに合体し、今までで一番大きな合体ウイルスが誕生した。 「ここへ来て、合体するとは」ブルースが冷静さを保ちながらも、面倒なことになったという口調で呟く。 合体したことは確かに効果があったようで、ビークルーアーマーのガッツマンまで含めて全員まるごと薙ぎ払われた。そして、氷のドームへ攻撃を加える。
「ロックマン!」全員が口々にロックマンの名を呼ぶ。 氷のドームは破壊され、氷塊が山を成す。 「大丈夫!」「待たせたな、みんな!」 最初はロックマン、続いて熱斗の声で返事が返ってくる。 「成功したんだ!」透が声を上げる。 「熱斗、良かった!」 「行くぞ!ロックマン、ノートンファイター!まずは、あいつを倒す!」 「うん、熱斗君」 「ロックバスター!」 ロックバスターがウイルスに命中し、しっかりとした傷を与える。さらに体術を駆使して素手での攻撃もダメージになっていることを確認する。 「すごいな、これがノートンファイターのワクチンの力か」 熱斗は攻撃力に納得し呟く。そして、攻撃を続けウイルスをダウンさせると、ロックバスターを溜めに入った。 ちょうどその時、薙ぎ払われたナビ達が全員起き上がってくる。 「チャージショット!」 ロックバスターの数倍の威力を誇るチャージショットでも1撃では倒しきれない。だが、充分な傷とダメージは与えている。 「ロックマン、裂け目に行って!今の状態のウイルスなら私達で何とかできるから!」 ロールの言葉にロックマンは頷いて、裂け目へ突入した。 ロックマンがウイルスの親玉的存在と戦闘開始を迎える時、ロールやブルース達は合体ウイルスにようやく勝利したのである。
裂け目に入って、ロックマンは探し続けた。当然ながらウイルスの親玉的存在を、である。 残してきた仲間達が合体ウイルスを倒すくらいの時間が経った時、やっと見つける事が出来た。 「あいつが、今回の事件の・・・」 合体ウイルスでもウイルス自身が大きくなるだけで、パワーと重量が増えることが基本だった。が、この親玉は違う。パワーと重量のみならず、攻撃手段や姿もまるで違う。 だが、ノートンファイターの持っていたデータから照らし合わせると、間違いなくあのウイルスと同じである。そして、根源のウイルスであることもだ。 「行くぜ!あいつを倒さなきゃ!」 まずは、ロックバスターを連射して相手を探る。すると、ロックバスターが跳ね返される様子が確認できた。 「熱斗君、ロックバスターが」 「分かってる、あの釣り針のついた蜘蛛の糸みたいなヤツを振り回して防御してる。アレを何とかする必要があるな」 「ソードで切りに行く?」 「アレが1個だけじゃない可能性がある。ロックバスターでそれを確認してみよう」 複数の角度からロックバスターを放ち、防御されるかを試す。 全て防御された時に、複数の釣り針付き糸を確認できた。それだけでなく、さらに反撃が来たが避ける。その反撃は囮の攻撃で、本命は体当たりであった。 「体当たりしてきても、ダメージも受けないなんて」 「流石に親玉ってところか」 ロックマンの呟きに、熱斗が納得したという返事をする。 体当たりした親玉は、そのまま裂け目へと向かっている。ロックマンも追いかけて元の空間に辿り着く。
「ロックマン!」ロールの声で、皆ロックマンに注目する。 「あいつが親玉だ!みんな気をつけてくれ!」 ロックマンが縦横無尽に動き回り親玉の注意を引きつけて、他へ攻撃がいかないように牽制する。 流石に親玉だけあり、ロックバスターではかすり傷程度、チャージショットでも少し傷を負わせる程度にしかならない。その傷を他のナビが攻撃して傷を広げていくが、倒すには相当時間がかかるのは目に見えている。ただ、複数で攻撃しているので、釣り針付きの糸の数が減り、防御力はかなり弱まってきているのは確かである。 「このままだと皆の体力が尽きちゃうよ!」ロックマンがどうすればいいのかと言わんばかりに発する。 熱斗も同様の考えであり、打開策があるか探して周りを見渡している。そこで1つの案を思いついた。 その案を伝えるべく、仲間達と集まる必要がある。そこで、攻撃をウイルスと地面に行う。地面から上がる煙に紛れて仲間達と共にウイルスから充分な距離を取った。早速案を伝える熱斗。 「という作戦を思いついたんだけど、協力してくれるか?」 「しかし、それは無茶というより、無謀に近いかもしれん」カーネルが冷静にツッコむ。そこへ親玉が攻撃してくる。伝えることは伝えた。しかもこの状況になった以上、熱斗の言った作戦に乗っかるしかない。
親玉の攻撃を避けながら、散開するロックマン達。ガッツマンとカーネル。アイスマンとブルース。サーチマンとロール。そしてロックマンとバイク。それぞれに分かれた。 まずは、ブルースとカーネルが親玉の注意を引きつける。その間にガッツマンはスペシャルウェポンを解除して、車に戻す。アイスマンは氷のジャンプ台を作り、ガッツマンがそれを支える。 サーチマンはサーチショットを放つ為の固定準備に入る。そしてロールはサーチショットを放つ前の囮としてのロールアローを援護射撃中だ。 ロックマンはバイクに乗り、車にバイクごと突入した。すぐにノートンアーマーに成らず、氷のジャンプ台へ猛スピードで突っ込んでいく。 「ブルース、カーネル!下がって!サーチマン、サーチショットを!」 ロックマンの指示に従うブルースとカーネル、サーチマン。 サーチショットが放たれ、親玉の口付近に命中。親玉の口が大きく開かれた。そこへ、猛スピードでジャンプ台からジャンプした車が親玉の中へ突入する。親玉の中で中心というべき場所に辿り着いた車。
「スペシャルウェポン、ノートンアーマー!360(スリーシックスティー)バースト!」 ノートンアーマーに変型した直後必殺技を放つ。つまり内側から攻撃を加えるという作戦だったのだ。 「外からだとたいした傷やダメージにならなかったけど、こっちは結構効いてるね。熱斗君」 「だな!ノートンアーマーのエネルギーを上げるぞ!」 エネルギーのアップした必殺技が放たれ続ける。すると複数の穴が開いて、外から光が入ってきた。 「よし、脱出だ!」 手近な穴から親玉の外へ出たノートンアーマー。最後の一撃を準備する。
「ワクチン、チャージ!」 右腕を親玉に向けて、チャージショットの体勢に入るロックマン。その様子を見て、とっさの判断でナビ達がロックマンのチャージ状態を守ろうとする。アイスマンの防御壁をガッツマンのパワーで支える。突破されると、今度はロールとサーチマンのホーミング系ショットが親玉の攻撃に反撃する。ホーミング系ショット同士で、同士討ちさせてさらに突破される。最後はブルースとカーネルが、格闘戦で時間を稼ぐ。 ついに、ワクチンのチャージが完了した。 「ワクチンチャージショット!」 ロックマンのチャージショットにワクチンをチャージして攻撃力を高めるということをしたからなのか、ノートンアーマーは大破してロックマンが落下する。落下しながら、親玉の最後を見届けるロックマン。仲間達も親玉が倒れたことを見届ける。 「終わった・・・」 「終わったね、熱斗君」 「熱斗、よくやった。お前は立派なオペレーターだ」 ノートンファイターの声は光 正(ひかり ただし)の声にそっくりだったことだけ、熱斗は覚えている。
クロスフュージョン用のフィールドが解除されると、熱斗は体力の消耗が大きかった為に、その場に倒れ込んでしまったのだった。 数日後、熱斗の回復と共にライカとバレル大佐が日本を去った。再会をを約束して。
了 ノートンファイター、眠りにつく あれから数ヶ月の時が過ぎた・・・ ノートンファイターは再び、特別プログラム保管庫で眠りについた。もともと光 正(ひかり ただし)の意向からすれば、ノートンファイターが動き回るようなことは望まれていなかったからだ。 時空間の裂け目を閉じた後、IPCやネット警察のナビ達と共にノートンファイターが念のため出動していた。しかし、あの件以降、あのウイルスが現れることは全くなかった。結果、ノートンファイターを眠りにつかせる判断が下されたということである。 「まさか、おじいちゃんの作ったノートンファイター一緒に、トライアングルフュージョンするとは思わなかったぜ」 「ナビとナビのクロスフュージョンも世界初だったしね」 トライアングルフュージョンの際に行われた「ナビとナビのクロスフュージョン」は、科学省の正式プロジェクトとなり、実用化・商用化を目指して研究が進められている。もちろん先導は光祐一郎であり、プロジェクトメンバーには名人もいる。 「光家、3代の力と魂をクロス、か。俺、将来はおじいちゃんやパパみたいになれるかな?」 「それは、これからの熱斗君次第だよ。熱斗君、今日の宿題ちゃんとやろうね」 ロックマンのお小言を華麗にスルーして、今日はどんな風に遊ぼうかと考えている熱斗であった。
参考資料 ロックマンエグゼwiki ノートンファイターwiki ロックマンエグゼまとめ@ウィキ−光正
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